お題 | ナノ

約束は左指


その本は、ずっとずっとずっとずっと狙っていた本で、だからだから、お願いだから、頼む、本当に、いや、まあ、うん。

「さっき初めて見つけた本なんだけど」
「だろうな」

元就は『まさかり担いだ金太郎』を脇に挟み、必死に頼んでくる佐助の頭を見ている。
文庫の棚に無理矢理押し込まれた絵本を妙に思い、引き抜いた瞬間に耳をつんざく猿の雄叫び、いや、悲鳴。

「安心しろ、我が読んだら貸してやる」
「それじゃあ駄目なんだって!」

図書館は静かに、佐助の伸ばした右手の小指に、自分の右手の小指を絡め、絵本を開く。
おや、親愛なる幼なじみへの愛の手紙が挟まっている。