お題 | ナノ

消えていく人


「ここは俺の家のはずだったんだがな」

見回すと、奥に建物がある。
おみくじと御守りが売っている、生活感の感じられない建物。
一応引いてみると、中吉だった。

「どうして、連れて来ようと思ったの」
「ああ、俺の知り合いが言っていたからな…お前みたいなことを」
「片倉さん?」
「その通りだ。だから会わせてみようかと思ったんだが…」

やけに親切な他人だった、と蒼は土を足で掘りながら笑う。
もう会えないのか、とは言わない。