お題 | ナノ

やさしい殺意


蒼は貝を舌で滑らせながら、そうだな、とだけ呟いた。

「今度こそきちんと話すからさ、伊達ちゃん、聞いてね」

いつかの話、昔話。
忍、主人、春日山、騎馬隊、六爪、雷。

酔いに任せ、口が回らない。
それでも最後に、どうしても伝えなければならなかった。

「伊達ちゃんと旦那は好敵手で、俺様は伊達ちゃんに殺されたんだよ」

蒼は日本酒を胃に落とし、おそらく、謝ったのだろう。