お題 | ナノ

綺麗な嘘だけ拾った


二十年ちょっとの時間を、間違って思い出してしまった。
耳鳴りのような偶然と、遠巻きの物語。
嘘と現実は同じようでいて、目に見えない隙間がある。

「おい、佐助、さっさと来い」

居間で自分の名を呼ぶのは、あの紅ではない。
手からこぼれた紅茶を拾うことはできない。

「どうしたんだ、佐助」

teaを所望する同居人に、佐助は言葉を返すことができない。
一体全体、どうしてこうなってしまったのか。