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来年も再来年も


つい、と出された朝飯はいつもとは少し趣が違う。市が重箱を持ってきた。長政に開けて、とようやく身振りで示したので、長政はそれに従った。市がいつまでもうろうろとしていたせいで、もはや昼飯の域だ。腹が鳴り止まない。

「何だ、これは」

右端の黒い塊を指差し、長政は尋ねた。

「黒豆…?」
「ならば、これは」
「きっと、だし巻きだわ…」
「この、これは」
「かま、ぼこ…?」

次々と指を差すそれらは、どれも正月の祝いものとは思えない。どれも黒い。黒豆が黒いのは当たり前だが、他のどれも同じくらいに黒い。長政は上の右端から始めて、最後のそれを、もはや無意識の内に指した。

「くりきんとん」

尋ねる前に、少しはしゃいだ声。
真っ黒の重箱の隅に、たった一つだけ黄金に輝くそれがあって、全部黒なのだろう、と高を括っていた長政は驚きを隠せない。

「綺麗にできたものだな」
「長政様、好きでしょう?作っている内に、他のものがこうなってしまったけれど…」
「まるで金だ」

食べて、と催促され、長政はようやく箸を取る。

(金が取れたら、かんざしでも送ろうか)

甘い甘い幸せが、長政の口を満たし、今年一年を示しているように思えた。