末代までの栄光だとか末代までの語り種になるとか、皆がしきりに言うものだから、名を残されても嬉しくない、と一瞥した。はっきりと発音した唇は乾いていて、引っ張られる感触がする。 「そのようなことを言うものではない、と怒られてしまうね」 「そうだな」 「君は怒らないのかい」 どうして、という顔だ。また何も分かってくれない。いつも何も分かってくれない。しかしだからこそ言える。言ってしまう。自分でもどれが本音なのか分からないが、何もかも考えないまま言ってしまう。 「名はいらない。名誉もいらない」 じゃあ何が、とは聞いてこない。野暮な人間であればよかったのに。いつも思う。そうすれば、細い喉の管に突っかえた気持ちが言葉になる気がする。呼吸の苦しい理由は、いつだって誤った言葉の選択だ。 「…君の名は、残るかな」 「きっと残んねえよ」 さぞつまらなさそうな欠伸が二つ。君が残らないと言うのなら、きっと残らないのだろう。解決を求めない姿勢が、妙に落ち着いた。 |