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秋の落ち葉すら赤いので


「わたしが幻術を見せているのかもしれませんよ」

強固とはお世辞にも言い難い背中が、弓のようにくにゃりと曲がっている。今更、とマイタケ城嬢は思う。けれど、そんな野暮なことは聞かない。
ねえ、知ってます?と、確かにあの時は大きく見えた背中をそっと撫でる。

「人は生まれてから死ぬまで、長い夢を見ているのですわ」

まるで内緒話をするかのように、いたずらな顔で。たまに子供みたいな表情で、困らせることを。
背中はほんの少し驚き、顔だけ向けてきた。開いた口は、いつも夢のように優しい言葉を紡ぐ。

「あなたの夢の中に、わたしはいるでしょうか」

勿論ですわ、と微笑む嬢に、まだ情けない笑みを返した里芋行者は、精一杯背中を伸ばし、最高の夢を見せてさしあげましょう、と言ってみせた。
今だって背中は大きく見える。