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熱くひび割れた


「たとえばお前が右足を怪我するだろ」
「しねえよ」

そもそも仮定からおかしい。作兵衛は怪我なんてするつもりはない。右足は軸足だ。命だ。頼まれたってするもんか。
それでもとりあえず無自覚な方向音痴の言うことの続きを聞いてやる。話すことまで方向音痴だと気づいたのは最近だった。ちなみに左門は全世界に対して方向音痴を発揮して、厠探しの旅に出かけてしまった。

「でもって俺が左足を怪我すんだよ」
「で?」
「二人三脚」
「……間を話せ」

聞いた話なんだけど、とひそひそ大声で。学園長の思いつきの運動会がまたあるとかないとか。だから二人三脚は速い方がいいとかいいとか。

「だから右足」
「そんなことしなくても二人三脚はできるだろ」

というより怪我した足を結んだら、真ん中は機能しなくなる。まさか作兵衛の左足と三之助の右足とで走るつもりか。気持ち悪い。
三之助は考える素振りを見せ、しばらくした後に手を叩いた。

「そうか」
「やっと分かったか」
「三人四脚で、右足を怪我した左門と左足を怪我した俺と両足を怪我したお前が、」
「股裂いて殺す気か」