「だから君と仲良くしたいんだけど」 すっと差し出された手に、兵太夫は応えれなかった。怪しすぎる。怪士丸より怪しい。 いきなり一年は組の教室に現れて、いきなり兵太夫を呼んで、兵太夫くんだよね、で、いきなり手を差し出して、だから、だ。兵太夫くんだから仲良くしたい、って、何の話か掴めない。 「俺の名前、知ってる?」 「久々知先輩ですよね」 「兵助、って言うんだけど」 兵太夫で、兵助で。交互に指し、さぞ名案のように久々知は笑ってみせた。 「兵のよしみで仲良くしようよ」 隣の家に塀ができたんだって、へえー、兵太夫の頭を通過したのはそれだけだった。 |