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蛙との遭遇


穴に落ちた。小さな世界が広がっていた。

「おやまあ、大丈夫かい」

ぽかん、と口を開けたままでいると、相手も同じような顔でこちらを見ていた。素っ頓狂な顔は、光と泥とで黒ずんでいた。

「綾部先輩」
「うん」
「綾部先輩ですか」
「そうだよ」

僕は三年ろ組の神崎左門です、と言いたくなったけれど、大丈夫かい、がずいぶん優しい響きだったので、綾部先輩なんだ、と呟いた。綾部先輩ですよ、と返ってきた。