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史上最高の


「誰かを引っ掛けるためのからくりじゃないのかな」

図書室の本に挟まっていた一枚の紙切れを太陽に透かし、兵太夫は呟く。どこからどう見てもからくりの設計図であるそれを、見たり見たりで小一時間。どうしても図書室を出て三治郎を呼ぶ気にはなれない。今頃、自主練と委員会を両立したじゅんこ探しの旅に出ているはずだ。
どうしたものかとため息をひとつ。作ってみたい気は、確かにある。しかし、何がどうなってこの本に挟めたとか、そちらの経緯の方に目が行ってしまう。忍者の歴史、だったか。庄左ヱ門が借りただか借りたいだか言っていた。

貸し出しカードには、様々な名前が書かれている。知っている名前と知らない名前の境界線をなぞって、少し幼い作法委員長の名前を見つけて、何だか嬉しくなってみる。
そのまま下がっていくと、学年も一緒に下がっていく。けれど、一番左の学年を書く欄は決まって三だ。三年の歴史の試験はみなを悩ませるようだ。神崎、三反田、浦風、黒木。突然二本足りない学年が目に飛び込んだ。

「庄左ヱ門?」

太陽に透かすそれを見直すと、我が学級委員長にそっくりな字で、どれほど悩んだだろう、黒の染みが幾つもできていた。

ふうん、いいことを知った、と兵太夫は立ち上がる。二本足りない学年の下に二本足りない学年を書き加えて、図書委員に本を渡す。難しいよ、これ、と言われたけれど、いいんです、とだけ答えた。

頭の中は二つ足りない歯車が、動き出す時を待っていた。