「タカ丸さん」 委員会後に、三郎次に突然神妙な顔つきで呼ばれたものだから、タカ丸は背筋が凍る思いをした。何かへまをしただろうか。思い当たる節が多すぎてどれか分からない。 三郎次はタカ丸に向かい合って、がっちりとタカ丸を捕まえた。とうとう逃げられない。どうしたものか。しかし三郎次の言葉は想像から大分離れたものだった。 「タカ丸さんのこと、先輩、と呼ばなくていいんですか」 何のための紫だ、と言わんばかりに三郎次は紫を握る。青で、浅緑で、紫で。三郎次は序列を非常に気にする。紫への憧れかもしれない。 タカ丸はむず痒そうに頬を掻いた。確かに、と言っては確かになのだが、別段何か困るというわけではない。親しげでいい、と思ったことさえある。 「だって俺が一番下じゃない」 「でも……」 「俺から見たら、三郎次先輩なんだけど」 三郎次は神妙な顔つきから、何か言いたげな顔になった。先程タカ丸が感じたむず痒さと同じだろう。 「三郎次くん」 「はい」 「やっぱり、三郎次くん、がいいね」 「そう思います」 来年は二人とも先輩だ、とタカ丸は笑う。伊助から見たらもう先輩なんですけど、と三郎次は大真面目で言う。三郎次先輩、ともう一度繰り返すと、勘弁してください、と恥ずかしそうに顔を背けられた。 |