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上にも


「用があるのは君にじゃないんだけど」
「それを言われましても」

へなりと微笑む姿からは、強い意志は感じられない。何でも言えば曲がりそうだ。感じられないのに、すべてが意志の塊であるかのようで癪に障る。
三年は、保健室の前で正座をしている。何が何でも通さない、と言いたげだった。そのくせ何も言わないからたちが悪い。

「先客がいまして」
「用があるのは薬だけだから」
「少しでしたら僕の部屋にもあります。足を捻ったのでしょう?」

さあ、と促すのには乗らない。促すくせに立ち上がろうとしないのには信用できなかった。

「帰るよ」
「それがいいかもしれませんね」

止めないのか、と尋ね返すのは負けな気がした。尋ねなくとも負けていた。負け犬の気分で捨て台詞を吐く。たかが忍者のたまごにどうしてこんな悔しい思いをしなくてはならないのか。

「君はまるで石だな」
「三年ですから」

三年は何も考えていない顔で笑った。冬の廊下はひどく冷えるだろう。