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直立不動


「わたしは自信家が好きだよ」

また伝七に何か言われたのか、兵太夫は聞いてくれないだろうと思いながらも穴に言葉を落とす。誰も聞いていないも同然だから、言いたい放題だ。
本当あいつって自信家で、の辺りで、ざくざくと掘る音が止み、自然と兵太夫の口も止まった。土をかけられるかと思って、妙に親指に力が入る。
しかし飛んできたのは土ではなく、中に籠もった、通った声だった。

「自信があって胸を張れる人間はかっこいいじゃないか」

じゃあ綾部先輩は、と尋ねたい気持ちは、何事もなかったかのように掘り出した土にかかって見えなくなった。