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中心で叫ぶ


「僕は火薬が好きです」

出し抜けの一言に、兵助は目を見張った。三郎次は大真面目な顔で見上げてきて、もう一度繰り返すものだから、聞き違いではないことを思い知らされる。
そうか、と呟いた。そうです、とはっきりと答えられた。

だから、背中を押した。

「俺は三郎次が好きだな」

ばしゃん、と水練池に汚い波紋もどきが広がる。三郎次はさっきよりしっかり兵助を見上げた。底につかない割には綺麗にそこにいた。

「僕は火薬が好きなんですか、火薬委員会が好きなんですか」
「俺は三郎次じゃないから、そんなことは知らない」

にかっ、と笑って、手を差し伸べる兵助に、三郎次も濡れた顔で満面の笑みを見せた。

「僕は火薬委員会が大好きです」