「もしかしたら来ないかもしれませんよ」 「でもやりかねないよ」 完璧を目指した計画表は、いつの間にか降り出した雨でよれてしまった。くにゃくにゃになった計画表をまとめるのに苦労しながら、兵太夫と喜八郎は狭い窓から頭を出す。ぴちょん、と頭に落ちる度に、花占いのような気分になる。来る、来ない、来て、来い。 準備は完璧、匍匐前進をする彼の重さ分でばっちり抜ける落とし穴、落ちた先に待つのは天国でも地獄でもなく泥の世界。 そして横を普通に歩く彼。 「わっ、あっ、普通に会計室に行っちゃいますよっ」 「何て人。じゃあ、作戦その二。兵太夫、どれが会計室への近道?」 「右から二番目の引き出しです!」 「えい」 「あ、それは……」 先に待つのは天国か地獄か、泥の世界か。もしかしたらどれでもなくて、全部かもしれない。どれでもよかったけれど、できれば今から待ち受ける泥地獄以外がよかった。 |