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春は止まない


冬が好きだとかいう話をした。沈黙が重くて、話す内容に詰まって、頭に何も浮かばなかったから、四季の話をした。今の季節なんて知らないけれど、滝夜叉丸さんはずいぶん真面目に聞いてくれた。

「わたしも好きだな」

ひゅうひゅうと風が強くて、いつもと違う色に包まれた滝夜叉丸さんの顔は浮いて見えた。きっと、滝夜叉丸さんも同じことを思っていたに違いない。
曇りの向こうの目が、ゆっくりと瞬いた。

「しかし、これでは秋ではないか」

色眼鏡は秋を映し、いつまでも季節を明らかにしない。
冬が好き、その理由は、凍える指先とか、凍ってしまった水練池とか、霜焼けを感じさせる色眼鏡の奥に隠されている。