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角のない交差点


兵法の授業はつまらない。机にかじり付いているい組はそうではないのかもしれないけれど、少なくとも団蔵にはつまらない。
ここは試験に出すからな、と大きく丸をつけたところだけ手早く書き写し、教室を出る。委員会があるから、早く行かなくては。

「兵法は大事だぞ」
「試験には何が出ますか?」

ここは必ず出すんじゃないか、と襖の向こうで左吉と三木ヱ門が話をしている。学年全体の試験だから、本当に頑張ってくれ、と頼み込む担任が頭に浮かんだ。
三木ヱ門が言ったのは、ついさっき担任が大きく丸を付けた、団蔵がそれだけ書き写した、それだった。
どうしてか襖を開けれず、ぽつんと立っていると、文次郎が団蔵の肩を叩いた。まだ襖の向こうでは兵法の話で盛り上がっている。

「どうしたんだ」
「先輩、」

犠牲にするとか、囮とか、三木ヱ門と左吉の話は白熱し始めている。団蔵は文次郎の手が熱くて、重くて、のろのろと口が動くのにしばらく気づかなかった。

「全員で立ち向かっていけば、勝てない敵なんていないですよね」

委員長は、無知に触れ、委員会が始まるから席につけ、とそれだけだった。