ログ | ナノ
包帯の巻き方を知っていた


人より幸せになりたいとか、欲のままに突き進むのも一つの道だ、と滝夜叉丸は思う。けれどそれは、ある与えられた特権がな ければ許されないものだ。権力とか、天賦の才能とか、周りをないものにする力とか。滝夜叉丸には一つもないものだけれど、それでも胸を張ることができる。 虚勢は得意だ。わたしは優秀だと、努力に裏付けられた自信を地盤に立っている。揺らがない、揺らがせない。

「努力家だね」

そんなことないですよ、と笑って言える、そんな人間になりたい。輪子と積み重ねた歴史は、天才の一吹きにかき消されることを知っていても。