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たとえ火の中


「僕は怖い?」

触れ合った額と額から、三治郎が入り込んでくる。ゆっくりと、それでいて確実に。座った孫次郎を押さえつけるように膝立ちのまま、三治郎は尋ねてきた。

敵が怖い。忍者の三病の話をした。もしかしたら人が怖いのかもしれない、と孫次郎は言った。

弱々しく首を振る姿はどこか覚束なくて、三治郎の気持ちは額から溢れ出す。
じっと見上げる先には三治郎しかいなかった。

「怖く、ない」
「なら良いんだ」

額を離し、へら、と笑う三治郎に、孫次郎も精一杯の微笑みを返す。
どうしてだか、その夜の底冷えする寒さが身に凍みて、今でも忘れられない。