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12歳


数馬はしょっちゅう泣きそうな顔で笑う。12歳にはどうしようもならないことが多すぎる。いらないものを零す技術がないから、手の中でいっぱいになった気持ちをぎゅっと潰してしまう。
俺たちにその悲鳴は聞こえないけれど、いびつになった気持ちは、転がらないでゆらゆらと手の中を回る。

「俺に謝ってもしょうがないだろ」
「……うん、ごめん」
「ごめん、じゃなくて」

大切な気持ちを半分潰してしまった数馬は、情けない笑顔を見せた。そんな笑顔いらない。
保健委員はひどい傷の手当てとかで、本来ならまだ知らなくていい世界に首を突っ込んでいる。知りたくないものを一番に知ってしまった数馬は、どことなく頼りない笑顔で全てを受け流す技術を身につけてしまった。
伊作先輩の斜めな笑顔に似てきた、なんて言ってしまったら、全てが終わる気がする。

「俺の前では、ちゃんと12歳していいから」

うん、ごめんね、ごめんね、と栓が抜けたように、数馬はいっぱいいっぱい泣いた。俺はじっと12歳の無力さを噛みしめて、噛みしめて。