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指先を察した


ずっとこのうなだれた頼りない背中を見てきたのかと思うと、公開拷問を受けていた気分になる。
逸らした瞳はいつだって地面しか見えない。去年着ていた色が視界の端に映るので、暗闇に全部隠した。

「伊作先輩を見ていれば良かったのに」

まだ何も知らない一年みたいに、頼れる伊作を見ればいい。何だって分かるしできる、理想の先輩。数馬が追い求めるのはその背中だし、誰だってそうではないのか。
伏せた瞳では見えないから、その時の左近の顔は分からない。でも、きっと、目を見開いて、絶望したような表情をしたに違いない。どれほどひどい言葉を言ったかは、自分が一番知っている。

「どうして、そんなことを言うんですか」

暗闇に届いた言葉は、思っていたよりも地の底を這っていた。
顔を上げた時にはもう遅い、そんな状況になっていれば良かったのに、粘り強く左近はもう一度、どうして、と繰り返した。

どうして、なんて。