「どうして飛ばしちゃったんですか」 呆れに近い疑問を隣の先輩に飛ばしても、先輩は大した返事をしてはくれない。この先輩とはそういうものだ、と諦めているとはいえ、少々不服を覚えないわけでもない。 くくりつけた紐が斜めへ向かうのを止めながら、反対隣の後輩に目をやるが、さあ、と言わんばかりに首を振られた。綺麗に抜けた色が鮮やかに散った。 「あの、僕がいけないんです」 「どうして」 委員の中で一番に物静かな青色の頭巾が申し訳なさそうに下を向く。まるで尋問しているみたいじゃないか。少し待つと、更に下を向いてしまった。 「お前は悪くないぞ」 頭越しに言葉がひとつ。落ちた視線が太陽を向く。 そのまま皆無言になり、歩いて、歩いて。 「先輩の足袋、あれじゃないですか」 「お、みたいだな」 鼻歌みたいに口ずさんだ、明日天気になあれ、の節が、耳元を離れない。 二年の実習は明日だったはずだ。 |