「先輩、忍者になれるんですか」 ぽっと飛び出した言葉は、多分、市場最大級に先輩を傷つけた。だって先輩は笑っていた。どうしようもなく、ただ笑って、笑って。 「ほ、方向音痴の忍者って新しいですよね」 「左吉」 「すっ、すみません!軽率でした!」 何か言えば言うほど墓穴になって、先輩の顔を見られない。先輩はまだ笑っているかもしれない。愚かな後輩だと、後から皆に広めるかもしれない。 だけど先輩は、わしわしと僕の頭を撫でてくれた。 「俺もなれるかな、忍者」 「……なれます!先輩は、誓って絶対、忍者になれます!」 「じゃ、指切りしよう」 「はい!」 先輩は笑って、笑って。僕も笑って、ちょっと泣いて、また笑って。 |