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高く険しく


「七松先輩のようになりたい」

意外な顔をする下級生をよそに、三之助は、知っています、と言わんばかりに目を伏せた。自分だって下級生だけど、同じ括りに入らないのは、滝夜叉丸と一つ違い、というのが大きいからか。
ともかく伏せた瞳の奥に映るのは、猛々しい体育委員長の帰還とその背をじっと見つめる滝夜叉丸の姿だった。

「わたしが彼の補佐になれるくらい、強くなりたい」
「大丈夫、ですよ」

三之助、と滝夜叉丸は言った。零れた言葉は泡となる。
大丈夫ですよ、繰り返す。小平太は滝夜叉丸の支援を受けなくてもやっていける、というニュアンスはどこにも込めていないことを分かってくれればいい、と顔を上げる。

「滝夜叉丸先輩なら、大丈夫です」

ほっと、小平太の背中を追う目になる滝夜叉丸に、そうですよ、と金吾も四郎兵衛も太鼓判を押した。
ますますほっとした顔に、三之助は見えない一年の壁に触れていた。