カチ、と遠くで作動したのが響いてきた。 一人だとこうも静まり返るものなのか、という感心が半分と、どうすればいいか分からない焦りが半分、地下を埋め尽くしていく。 まだ早いんじゃない、と胸の中でぼやいたけれど、近づいてくる足音から逃げようとは思わなかった。 そういえば石に隠れる術が苦手だった、と思い返すと、途端にもぞもぞと足が気持ち悪い。 来てほしい、と何度も思ったくせに卑怯だ。自分を罵るのは石になるより簡単だった。 「三ちゃん、」 からくりだらけの廊下にひんやりと風が通る。この道を無傷で歩けるのは、自分とこの声の主だけだ。 「罠が甘いよ、三日も籠もったんだから少しは新しい罠でもつけたのかと思った」 ほら、と振り向かない頭にたくさんの紙が降ってくる。ひらひら、ここに落とし穴を、あそこに新しい水流を、たまに震えて力のない染みが幾つもあった。 遠慮なく降ってくる紙の最後の一枚は、こつん、と頭をつついた。 真上の顔を見ないように振り向いて、恐る恐る飛行機を崩す。 書かれた言葉が頭に入るのと一緒に、そこら中に広がる声も耳に入った。 「ごめん、ね」 今日はきっといい天気なんだろうね、と言うと、そりゃあもう三ちゃんにはもったいないくらいいい天気だよ、と友人は笑ってみせた。 地下から出たら、二人で傘をさして歩こう。 |