見ててもいい?と勝手に縁側に座り、兵太夫は金吾の自主練をぼうっと見る。 兵太夫なんか見向きもせずに素振りを続ける金吾は、ああきっといい武士になるんだろうなあ、と思わせるに値するくらい、型がしっかりしている。 「兵太夫、やらない?」 「僕はいい」 残念そうなんだかよく分からない顔をして、金吾はまた一から数え始めた。 ねえ、と声を掛けるのがはばかられる。 「喜三太はよく付き合ってくれる?」 「くれない」 喜三太は武士向きじゃないもんなあ、と呟くと、兵太夫だって、と手拭いで頬に落ちる汗を拭く。 金吾は武士になる?と尋ねると、きっとね、と笑った。 「兵太夫、一回だけ手合わせしない?」 「いいよ、僕弱いけど」 一笑して縁側に降りると、夏の照り返しがやけに眩しかった。 |