ログ | ナノ
温かな生き恥を晒す


不運にならなければならない、と思っていた。
善法寺先輩は、六年生中に敬遠される(愛情表現と言えるが)ほどの不運だし、川西はそんな善法寺先輩に引っ付いては痛い目を見る。乱太郎も伏木蔵も、まだ一年なのに薬を扱う委員会に入ってしまって不運だと思う(これは実際に言われたことだった)。
その中で自分ばかりが、どこか違う位置に立っているような感覚に襲われる。僕たち不運だから、と善法寺先輩の広げてくれる腕の中に入れない。おこがましい。

「数馬は不運じゃないよ」

藤内ははっきりと僕の顔を見ていた。不運になりたい僕は、顔を逸らしたかった。

「不運だったら、今、ここにいられない」

優しくて温かくて、顔を逸らす代わりに視界がぼやけて、藤内が見えなくなった。藤内はゆっくり僕の包帯だらけの手を握ってくれた。
苦しい息は、大きく跳躍して夢に消える。