誕生日は食券が欲しい、と頼んだら、恐ろしい厚みの食券が枕元に置かれていた。 これはさすがに、多すぎる。 「きり丸、おめでとう!」 声を掛けられる度に食券が増えていく。 廊下ですれ違う度に食券が増えていく。 きり丸の両手は食券を持つためだけにある、そしてもう持ちきれない。 「銭にすればよかった」 声を掛けられる度に銭。 廊下ですれ違う度に銭。 幸せな一日になりそうだ。 「でもね、きりちゃん」 同室の二人は拾っても拾ってもこぼれる食券を後ろから拾い続け、級友に渡してそれをきり丸に渡させる。 食券は一定量から増えていないということを、幸せの絶頂にいるきり丸は気づいていない。 「僕たちきっと、そんなことになったら」 「節分よろしく銭をぶつけまくると思うよ」 |