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周り見えて回る藁


武士と何か、と庄左ヱ門は指を立て、その場をくるくると回る。
武士とは何か、くるくる回られるので立ち上がれない金吾は自問自答する。

武士教本、という何やら怪しげな本を捲り、これは金吾には当てはまらないだの兵太夫には当てはまらないだの喜三太には当てはまらないだの、好き勝手言っている。
少し読んでみたい。

「武士とは、一番の敵は自分である」

これだ、と庄左ヱ門は回るのを止めた。
これなら金吾にも兵太夫にも喜三太にも当てはまる、と。

「ちなみに一番の味方は?」
「この本には書いてないけど」
「じゃあ書き足しておいて」

庄左ヱ門が回るのを止めたおかげでようやく立ち上がれた金吾は、痺れた足を無理に真っ直ぐにさせて、大きく背伸びをした。

「友人だって」
「図書館の本だから書いてはいけないけれど、書いておくよ」
「よろしく」