初めて団蔵の字を見た時、みみずがのたうった跡なのかと本気で思った。 眠い時に書いた字でもあれほどひどくはならないし、団蔵の真剣な目を見ていればそうでないことが分かる。 汚いと言っても直らない字を見続けている内に、いつかこちらが慣れてしまうのか、と思うと癪だった。 「やっぱり、汚い」 慣れて読めるようになって、それが悔しくていつも団蔵の字を突っぱねる。 読めるし理解できるし、それが、お疲れ様、なんて労りの言葉だったりしたら最悪だ。 労る前にその字をどうにかしろ、と常人が思うように、もちろん左吉も思う。 「でも、左吉なら読んでくれると思って」 団蔵はそんな左吉の考えなんて気にも止めず、口が裂けるほど嬉しそうに笑ってみせる。 やっぱり、癪だ。 |