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深層心理の湧水より


「女の子は生まれる前から恋をしているんだよ」
「珍しい、そんな考え方をするとは思わなかった」
「慶次くんの受け売り」

ひらひらと手が舞って、熱い頬を隠す。受け売りだろうとなんだろうと、実際に言葉にするとかなり破壊力がある。生まれる前から、はすごい。激しい。
でも佐助くんは何だか勢いづけられたらしく、そうだよね、そうだよね、と何遍も頷いた。知らないよ、と言いたかった。
恋の相談なら慶次くんにすればいい、と思うけれど、佐助に言わせるとそうじゃないらしい……慶ちゃんは女の子に嫌われない方法を教えてくれるけど、絶対本命の口説き方は伝授してくれないよ……まあ、確かに。

「慶ちゃんの受け売りシリーズの中で一番役に立ったよ、ありがと」

佐助くんは全てを見透かしたような目で伝票をかっさらって、他の追随を許さない。
慶次くんの受け売り、という嘘がいつから崩壊していたのか、分からない。

「生まれる前なら俺様に恋してたかもしんないよね〜」
「知らない」

あらあら冷たい、茶化すように佐助くんは笑った。僕は笑いたくなかったし、笑わなかった。