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天地無用


菜の花が咲く、黄色い丘に。ぽつんと空色が浮かんでいる。
しきりに先輩の名を呼ぶが、どこにも届かず、空とひとつになることもできず、うつらうつら、黄色い海を漂っている。
ぶうん、と鼻の先を黄色いのが飛んでは消えていき、戻ってこない。

置いて行かれたのは自分に体力がないからで(五つも上の先輩に合わせようとするのが無理な話なのだが)、不甲斐なさに唇をぎゅっと噛む。
先輩、と呼び掛けるのを諦め、もういいや、と思ってもいないことを口走り掛ける。

すると、遠くからざくざくと何か音が聞こえてきた。

「金吾!」

七松先輩が無理するから、何だと、いくら優秀なわたしと言えどきついと感じ……次屋!どこへ行くんだ、え、金吾に水でも汲んでやろうかと、いいいいわたしがやる、時友、水筒はあるな、あ、はい。
くるくる言葉が回って、倒れないようにしていた金吾はようやく黄色の大地に身を沈める。ふわりと花粉が鼻を突いてくすぐったい。

「お疲れさん」

空はずいぶん自分の服と違う色をしていて、何だか少し泣きたくなった。