このご時勢に焼却炉があるなんて、すっかりここだけタイムスリップしたみたいだ、と半兵衛は思う。ずんぐりとそびえ立つそれは、煙を天まで届かせることができそうなくらい、高く強い煙突が備え付けられている。 しかし煙突や焼却炉があるからといって、それを使うわけでもなく、その横を抜け、大きなごみ置き場まで歩いていく。焼却炉を使わないのは地球に優しいけれど、人間には少し優しくない。昼を済ませたごみ箱は汚いし、重い。以前は焼却炉までだっただろう道のりが伸びた、と考えるのは半兵衛だけだろうか。 「おい」 後ろから砂利を巡る音が聞こえ、ごみ箱を置いて振り返る。 「何だい」 「それプラか?」 「残念、燃えちゃうんだ」 あわよくば中身を合体して持っていってもらおうと思ったのだろう、と思ったが、どうやらそうではなかったらしく、しげしげとごみ箱の中を覗き込まれ、じゃあ、と歯を見せた。 「あの中にぶち込んでくれ」 「あれは使われていないんだろう?」 言いながら、ごみ箱はひったくられ、否応なしに錆び付いた蓋の向こうに吸い込まれていく。 何をするんだい、だとかは言っても無駄なので、よしよし、と焼却炉の中を覗く相手の出方を待った。そろそろできっかな、が焼却炉の中に響いた。 「なあ竹中」 「…何だい、政宗くん」 「そろそろ焼き芋の季節だな」 上げた顔は煤くさく、懐かしい匂いだった。 |