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いただきます


さあ食えやれ食えと小鉢にずんずん盛っていくそれはもはや芸術の域に達している。目の前に置かれた小鉢に弱い笑みをやり、半兵衛はこたつから手を出さぬまま、政宗に助けを求めた。

「小十郎、こいつは食が細いんだ」
「これを期に胃袋を拡張させればよろしいではないですか」
「meatだ、meatを入れろ」

ったく何にイラついてんだ、と政宗は肉だらけの小鉢から一枚口に放り、一枚を芸術の豆腐塔の上に乗せ、もう一枚をまた口に放った。

「食えよ」
「これ、何肉?」
「何だよお前、イスラム教徒だったのか」
「まさか。ねえ、本当に見たことないよ、これ。熊の肉とか?」

黒っぽくて丸くて何だか分からない。分かりたくもない。得体の知れないものに挑戦するくらいなら、豆腐のみの方がましな気がする。そもそも肉なのか。いや、さすがに肉か。政宗の異様な噛み具合も気になってたまらせない要因の一つだ。
そんな政宗はきょとんとした目を小十郎と一度見合わせ、ああやっぱり予想はしていたけれど、半兵衛にこう言うのだった。

「牛タンだけど?」



(いただきます)