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寺の人


住職の起床は早い。朝日の微かな光と共に、煎餅布団から起き上がる。

「かすが」
「はい、謙信様」

毘沙門天に今日一日の幸せを願い、勤行を始めよう。

「あさしゃんにいきます」
「では、支度を済ませて参ります」

へえ、さすがの住職でもシャワーくらいは導入してんのかい。ぱたぱたと駆けていくかすがを見ながら、天井に張り付いた忍風の男が呟いた。
現世に勤行のみをこなす心の強い人間はいなくなってしまったのか――これはお館様に報告、だな。

「いきましょう」
「はい」

風呂への道程とは遠く、玄関へ向かい、出て――そりゃあ寺にシャワーをそのまま付けるのも忍びないってもんだ――歩き、歩き、歩き。
滝へ。マジかよ。