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食用培養ごきげんよう


「卿は花を好むのだろう?」

悲鳴が聞こえる。底の黒く厚い靴に踏み躙られる運命の弱いものを保護する小太郎を見下し、久秀は喉を鳴らして小笑した。久秀の靴の底には悲鳴がたくさんだ。小太郎は顔を上げない。手も止めない。

久秀は花を蔑む。

「卿は何を望む」

生産性のない植物だと罵る。

「ここにウドとゼンマイを植えては怒るかね」

よく分からない二字熟語を繰り返し、わざと靴底を鳴らしながら嬉しそうに去っていく背中を、八時のサイレンが遮った。