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お昼にござります


「やっべー」
「どうしたの?慶次君」
「弁当忘れた」

あーあ、と教室中に騒めきが広がる。慶はん、私のお弁当あげましょか、とか言っているやつがいる。同じように教室のあっち端からも同じ悲鳴が上がった。

「さぁーすけー!拙者の飯がないでござるーっ!」
「落ち着いて旦那、早弁したっしょ」

おおお、と叫びは収束し、すとんと椅子に戻る音とガタガタと机を揺らす音、そして購買へ走りだす姿が見られた。ひょっこり佐助も付いていく。
一度は静かになった教室が、またざわざわと騒ぎだした。

「仕方ねーなあ。あ、まつねーちゃん?弁当、あるっしょ?や、それじゃなくて、ああうん、それそれ。ごめん、頼むー」
「まつ君、来るの?」
「おう、今」

半兵衛がふと見上げると、慶次は玄関ではなく窓に向かう。頭に疑問符を浮かべると、見兼ねた政宗が、

「俺の弁当は小十郎製だぜ」

教えてくれなかった。
その間ガタガタと窓を開ける慶次が目に入る。更に疑問符が増す。少し政宗が邪魔だ。弁当を自慢してくる政宗が邪魔だ。
慶次が外に向かって何かを叫んでいる。外からも慶次に叫んでいる。何?ともう一度尋ねると、

「このゴボウ巻きは昨日畑で収穫したんだぜ」
「ゴボウ巻きは収穫できないよ」

やはり教えてくれなかった。

「まつねーちゃーん!」
「慶次、お弁当にござりますー!よしなに」
「ありがと!」

政宗のゴボウ巻きを一ついただいたところで、慶次がぐちゃぐちゃの中身の弁当を持って帰ってきた。ゴボウ巻きはおいしかった。