「たまにさーやってんじゃん、トリプルのフェアみたいなやつ」 「ああ」 何が面白くて男二人で肩を並べてアイスなんて食べているんだろう、と正気に返らないよう、佐助は必死に話題を振るが、連れはアイスを食べると無言になる呪いでも掛けられているのか、ああとかうんとか適当な返事しか返してくれない。虚しい。 「昔からさ、そん時になると、絶対三人で食べに行こう、ってお金貯めてさ、ああもちろん俺様と小太郎とかすがで、」 「溶けんぞ」 「伊達ちゃん、いい話なんだから真面目に聞いてよね」 「Sorry」 ばりばりコーンを頬張る連れは、やっとこ佐助の話に耳を傾け始めた。何この不思議っこ。たまにやんなる。 「それで、三人でトリプルを頼んで一個ずつ食べんの」 「んな律儀なことしねえで三つの味を三人で食えばいいじゃねえか」 「俺様さあ、かすがの頼む苺のやつ、何か苦手なんだよね。ベリーベリーとかベリーなくなればいいと思う。まあそれで、フェアやってるのってやっぱ夏が多いじゃん。溶けんの劇的に速くてさ、一番下って悲惨」 「だから、」 「どういう頼み方しても、必ず小太郎が頼んだやつが一番下になんの」 「…So bad」 そう、ホント可哀相。どんな店でもそうなんだよ。べっちょべちょのアイスとコーンを食べて、しかも上のが溶けてるから、きっと変な味すんだよね。 けたけたと笑う佐助のアイスも溶けてきている。 「今年はどうなると思う?」 「一番下にトリプル一つ」 俺様も、と言いながら、さっさと胃袋に押し込め、さあ、ゲーセンにでも行きますか。店を出ると妙な湿度が待っていた。 |