「幸せが花畑みたいにいっぱい咲くのは夢で、本当は雪の下に全部全部埋もれてるんだべ」 失望したようにいつきは眉を潜める。今年も季節が一番遅れている最北端は、強い北風に雪が煽られている。 おさむらいさんのところはもう雪がねえんだろ、という問いに、政宗は嘘をつかずに答える。いつきは心底失望したようだった。ここで嘘のひとつでもついてくれたら、心の慰め程度にはなるのに。 「幸せが花畑だったら、ここには一生咲かねえんだ」 「俺には見えるけどな」 「……おさむらいさん、目をおかしくしたんじゃねえか」 「雪の花、って言うだろ」 政宗は北風に負けない風を刀で起こす。雪の竜巻は、いつきの前で緩やかな風になって、桜吹雪のように、きらきらと降りてきた。 どうして、何故だか泣けてくる。悔しくて、得意気に笑う政宗を睨みつけた。 「馬鹿、おさむらいさん、冷てえよ」 政宗はますます得意気に、満足そうに、いつまでも笑ってくれた。 |