老体は、自分の全てを絞り出すように尋ねた。 「何代目かの」 北条家のことかと思ったが、違うらしい。先頭に「お主は、」と付け加え、また尋ねてきた。 「何代目の風魔小太郎かの」 風魔小太郎は名前を売っている。伝説となる昔から、風魔小太郎は後継者を用意しながら死んでいく。見た目は兜に隠れるため、分からない。言葉を発さなければ、風魔は滞りなく交代を果たす。そうして何年も始まりと終わりを続けてきた。 先代から渡されたのは、変わらない兜、ただ一つ。誇りなんて貰えなかった。 小太郎は兜を被り直すように左右させ、老体の言葉なんて聞こえなかったかのように歩き出す。老体もそれに続く。 北条の連鎖は血と誇りに塗り固められている。羨ましい、そう思う心すら貰えなかった。 |