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谷間より


「通してくれたら、どうしようかな」
「何かくれるつもりなら口を開きな」

目の前の男が何もするつもりがないのを、小十郎は知っている。口先で踊らされる例はあまりにも多すぎて、一体最初はどんな嘘だったのか分からない。
白い服は肩を上げ、冷たいため息をつく。簡単に切り捨ててしまえそうだった。

「本当は何かしてあげたいけれど、僕には無理そうだ」

嘘そをつけ、と罵ると、嘘なんて、と笑う。してほしいことはいくらでもあるのだけれど、と苦しそうに笑う。
もう散々だった。

「君のいらないものしか僕は持っていないからね」

だからそこを通すんだ。細い剣が鞭打ち、君が秀吉の右腕になってくれたらいいのに、と後から男は言った。