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くしゃくしゃと丸まる


あんなに伸ばしていた髪を、ばっさりと切り、それを置き土産に毘沙門へ旅立った少女に会うことは、もう一生ないものだと思っていた。願望だった。できれば、会いたくなかった。
目立つから嫌い、と言うものだから、じゃあ俺さまが守ってやるよ、と言った。守らなくていいから髪を隠してくれ、と笑われた。太陽に輝く髪が好きだった。

「かすが」
「うるさい、馴れ馴れしく話しかけるな」

守ってやりたいのに、もう探せないならしょうがない、と諦めようと思っていた。追ってしまう長い髪がないのなら、追えないし、忘れてしまおう、と。
振り向いたかすがの耳をくすぐるように残された二房が、回転に揺らいで、冷たく佐助を貫いた。

目立つのが嫌い、だったら目立たないようしてやるよ、と冗談でも言えなかったのは、里に未練がある二房の中に、少しでも自分が含まれていればいいのに、と思ってしまうせいだった。