「喉を潤せればいいじゃないか」 「まあ確かに」 茶葉を一掴み、湯に通す。じわじわと浮き出てくる色合いに、どこの葉?と何気なく聞いたのがいけなかった。 確かに茶は喉を潤すためにある。それだけだ。味を楽しむとか香りを楽しむとかは、僕には必要ない、で切り捨てられてしまいそうだから言わなかった。 「君が茶に何を求めているかは知らないけれど」 それでも確かに、茶摘みの季節に、半兵衛は心なしか優しい瞳で摘まれていく茶葉を見ていた。だから飲みに来てやろう(偵察が一番の理由だったが)と思ったのに。 佐助の期待を裏切る青年は、ふと、主のいない庭先の空を見た。 「飲み慣れた茶がどこかにある限り、こんなところで油を売っている場合ではないよ」 柔らかく、香りが漂っている。佐助が手をつけないのは、鮮やかな謎解きの答えのせい。 |