それは忍だよ、と闇に紛れぬ烏の瞳を指さした。黒く消えていく中央に、双眼。アンタみたいだ、名前を呼んだが、無視をされた。 「わたしではない」 「じゃあ何だい」 「お前だ」 へえ、とわざとらしく眉を上げると、怪訝そうに唇を咬んでいた。 「よく似ている」 烏はカアと鳴く。アンタはいつまでも泣かない。幾晩経ったか思い出せるか。まさか鳥頭というわけでもあるまい。 ついばむ先の赤い木の実は、毒であるかそうではないか、瞳を覗く二羽の烏には分からない。 主のいない城に、穏やかな春は来ない。永遠を繰り返す、張った空気の端で、赤く染まる目の奥で何かが鳴いた。 |