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手の鳴る方へ、赤鬼さん


いつだって赤いのは夕日ばかりで、主人を赤い存在だと認知したのは、これが初めてだった。

「佐助、お主のことは死んでも忘れぬ」

ああ駄目だよ旦那、と思う。

(死んだら忘れて)

近付く死は恐ろしくはなかったけれど、自分がこの世から消えた後、何遍も何遍何遍も咀嚼するように思い出されるのではという不安(期待も入れ混じっているとは死んでも言えないし、死んだら到底言うことはできない)が背中を冷たくさせた。

人は忘れられるために死ぬのだと、猿は最後まで気付かない。