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ディグダグ


穴ばっかり掘っているから作法委員を追い出されて体育委員に来ました、と説明したのは、飄々とした綾部の手を握る兵太夫で、何の冗談?と口をパクパクさせて何も言えない滝夜叉丸の代わりに、後ろから出てきた金吾が代弁した。

「立花先輩が、気が済むまで穴を掘らせてこいって」
「でも、作法は?」
「ひとり抜けても変わらないが、平がいるならそれはそれでいい、らしいよ」

うーん、と大真面目に悩みこんだ金吾の後ろで、滝夜叉丸がわたわたと足踏みをする。そんなのだめだよ、と即答してほしかったらしい。
意地悪に、そんな先輩が少しかわいいと兵太夫は思う。

「きっとね」

綾部の手を離し、金吾のために小さな手の筒を作り、ひっそりと。

「立花先輩、綾部先輩が体育委員にいかないで戻ってきてくれるのを期待しているんだ」

そして綾部も兵太夫に、戻りましょう、と言ってくれるのを期待している。
小さな強情がいっぱいで、金吾は何となくもどかしい気分になる。

「今日は穴掘りはないんじゃないかな」
「そうかあ、残念ですね、先輩」

わざとらしく、大声で。草の葉がさわさわと揺れ動く。立花先輩、僕でも分かりましたよ、と委員会が終わったら言おう。そして後から金吾にも言おう。
葉が揺れきって、ようやく綾部が頷いて、滝夜叉丸も足踏みを止めた。

直に、委員会の始業の鐘が鳴る。