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帰京


今年も綺麗な花が咲く。草木灰の土は養分をよく含み、昨年のそれより力強くしなやかな成長を見せている。しかし天守閣から眺めていては、最初の開花に気付くことはできないだろう。からん、と下駄が土を蹴った。
庭は澄んだ空気の中にあった。燻るような匂いはもうしない。もどかしくさせるそれは、少しも残さず一年も前に天へ昇っていった。

しばらく視界を閉ざし、ようやく開けた。嫌味な程に美しい水色桔梗が花を咲かせている。ぽつんとそれも、周りのを枯らして一本だけ。

「まあ、風流なこと」

澄んだ空気に、何かが落ちる。今年も綺麗な、花が咲く。