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赤色巨星


一人の方が強くいられるのを知っている。仲間は枷だ。自分の背中を守る者を、逆に守る義務がある。守りあうことはできない。捨て置くのは許されない。そして結局は、強い側が弱い側と自らを守る。軍は重い。平和な姿すら重い。胸に響く笑いが辛い。明日いなくなるかもしれない 恐怖を、誰も、理解しない。

「筆頭」

夢の呪文のように、彼らは揃って口にする。荒れる自分を喜ぶ。キレちまってる、と言う。筆頭さえいれば、と死ぬ。重い。重い。
柔らかな屍の道に立てたらさぞ幸せだろう。屍は硬い。どうすれば柔らかくなる。教えてくれ。また一つ、屍が道になる。教えてくれる者はいなくなった。その屍も、やはり、他と同じで硬かった。

小さく呼吸する。笑ってやる。いつからか左の目だけ笑えなくなった。右の目は笑う。隠れる。見えないだろう。ずいぶん不気味な笑みだから、見えないのは幸せだ。自分の顔を知らない。笑えない感触が、目尻に落ちた。

(筆頭)

まだ、耳の奥で、呼ばれる。

軍は重い。枷だ。自分を現世に縛り付けるための、枷だ。なくては、もう、人にも、竜にも、何にもなれない。鬼が来た。硬い屍の壁を越え、赤い赤い、鬼が来た。どうか自分を、空に舞う、自由な鳥に変えてくれ。