庄左ヱ門になりたい、とでも言いたげな顔をしていたものだから、思わず手が出た。開きそうな口を押さえるつもりだったのに、気がつけば軽快な音と共に平手が宙を切っていた。 打たれて目線が変わった顔は、頬を押さえることもせず、口を開き、庄左ヱ門になりたい、とはっきり口にした。 「どうしたら庄左ヱ門になれる」 「無理だよ」 「強くなりたい」 「他にもいるだろ、虎若とか、金吾とか」 「僕は」 僕は庄左ヱ門になりたい。い組の何かがそうさせるのか、それとも伊助の知らない庄左ヱ門を見たのか、どちらにせよ、伊助はもう一発頬にくれてやった。 強くなりたいのなら、庄左ヱ門以外の何かになればいい。相手の頬よりも、自分の手の方が痛かった。 |